私がカウンセリングや感情のケアプログラムを教えるとき、よく「学生時代にスポーツか音楽をやっていましたか」と聞くことがあります。
私には、それらの経験がある人の方が、生き方スキルの習得が早いという印象があるのです。
おそらく勉強よりスポーツの学習の方が、複雑な要素を含み、成長も直線的ではなく、波を描いて上達するからでしょう。一時的に成績が落ちたり、スランプになっても、ある程度継続して練習を続けていると、次第に実力が向上していく。そういう経験を積んでいるかいないかは、社会に出てからの様々なスキルの習得に大きな差をもたらします。
ただ興味深いことに、スポーツや音楽で優秀な成績を上げた人の中には、逆に生き方スキルの習得に難しさを感じる人も多いのです。
というのも、スポーツや音楽を訓練する過程で、「頑張れば必ず報われる、結果が出ないのは頑張りが足りないからだ」というルールを覚えすぎている場合があるのです。
また、栄光がありすぎると、ある課題で人より出来ない自分に対して、一般の人より大きな挫折を感じてしまう、という側面もあります。
そんな人が何らかのきっかけでうつになると、努力にしがみつき、普通の人以下になった自分に自信を失い、うつからの脱出、つまり新しい生き方スキルの習得に、普通の人より時間がかかることがあるのです。「頑張る」やり方に固執し、「できるはずの自分」に固執してしまう。
こうやって考えてみると、大人の学習法を習得しやすいのは、スポーツや音楽をやったが、それほど一流ではなく、いろんな苦労をした人…なのかもしれませんね。
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