前回は村山正二先生の「体験」について感じたことを書きましたが、今回はその続き。
実は、先日、旭山動物園に行ったのです。有名な動物園なので、いつかはと思っていました。
当日は残念ながら雨で、私の好きな猿(やはり人間によく似ているから)の観察はあまりできなかったのですが、ふと上を見ると青大将(蛇)のとぐろが頭の上にあったり、オオカミ舎では、同じ目線で見られるというドームから探していると、頭の真上30センチのところにオオカミが寝そべっていて驚いたり、さすがに「行動展示」の旭山動物園ならではの驚きがありました。
中でも、私が一番感動したのは…カバ
私の知っているカバは、沼の中で鼻だけ出してプカプカしている。陸に上がるとドスドスと動く、物凄く鈍重なイメージ。ところが、旭山動物園では、カバが水中で活動する姿が見られるのです。水中を歩き回るカバは、まるで草原をかける馬のように軽やか。
同じカバを見ても、鈍重とみるか軽やかとみるか。いくら、水の中でも活動できますと知っていても、あのスピードや足さばきを「体験」するのとしないのでは、イメージに差があります。
体験は、イメージにつながります。人は、悩むときもイメージ(問題、人、出来事)によって悩みますが、そのイメージをより現実的、より悩まなくて済むストーリーに変えていくのがセラピー。ただ、理屈だけのセラピーは、体験感が伴わないので、イメージの変化がとぼしい。体験感を決めるのは情報量の多さです。現物に触れるのが一番だけれど、次に情報量が大きいのが、感情を伴うことです。
感ケアでは、悩みのイメージを取り出し、感情で少しだけ情報量を足しながら、それを味わいなおして修正していくという手順を取ります。これを感ケアでは、「プロセスを進める」と表現していますが、ロジャースやジェンドリンの言う「体験過程」に通じます。ただ、感情を思い出すと、感情の強さに引っ張られて、苦しいだけになってしまいがちです。そこで、感ケアでは、嫌な感情を良い距離で思い出す「触れる」というスキルを大切にします。嫌なことも良い距離感で触れると、より受け入れやすいイメージになりやすくなります。
あなたの心の中の鈍重なカバも、上手に触れる体験の中で、軽やかなカバに変わるかもしれませんね。