感情の海の中で、思考が果たす役割(3)
感情の波へ逆らうことをやめ、少し流されて冷静になってきたら、いろいろな対策を考えていきます。感情のバイアスから抜けた思考は、幅広く考えることができるようになってきています。感ケアで言う「再考」のプロセスです。
心でいろいろもがきながら、あるタイミングや偶然も重なり、苦しい環境から脱出できる時が訪れます。先が見える感じになり明るい気持ちになれます。「こうなったらこうすればいい」という方法論を得るからです。次に悩んでも、こうすれば大丈夫という認識、つまり第1の自信を得ること。これが思考の3番目の力です。
ところが、実際は、また悩み始めることが多いものです。TPOが違えば、これだと思った対処法が通じないこともある。一つの対処法にこだわるのは、思考優位のパターンです。また知らず知らずのうちに感情の潮目に流され、視野の狭い、同じ視界だけで思考しているだけのことがあります。その場合も、思考の力で、気づき、自己否定をやめ、しばらく流され、感情が落ち着いてから、再考を始めます。
そのうちに、ある時、これまで経験した複数の状況を統合し、かつ自分の中で受け入れられそうな解釈が浮かび上がることがあります。
多くの場合、何が有効なのか、という方法論だけでなく、なぜそれが良いのか、なぜその程度で良いのか、という自分を含めた人生や社会への全体的なバランスの良い理屈が浮かび上がるのです。ひらめき感もありますが、ある程度の時間をかけて感情ともバランスをとっていますので、納得感もあります。
これは単なる「悩みへの対処法を知っている」という自信(第1)ではなく、自分はこれで生きていけるという自分への信頼感、第2の自信です。カウンセリング心理学でいうところの自己一致が深まる過程。仏教では、このプロセスの最上形は「解脱」と呼ばれます。
このような新解釈を思いつくのが、思考の4番目の役割、一番大きな役割です。
思考の第3・第4の役割はとてもドラマチックで人々を魅了し重要視されますが、実は第1、第2の気付きがないと、先へはなかなか進まないのです。第1、第2のステップは、感情の海の潮目との付き合い方。日常生活の悩みレベルにいちばん影響があるのも第1、第2の思考の使い方です。深めたい方は、ぜひ感ケアの講座へおこしください。