ただ「吐き出せばいい」というものではない

 感情を押し殺してばかりいると、自分の貴重な一部を否定することになるので、自信を失うし、なにより疲れる。だから、私たちは押し殺している感情を吐き出したいと思う。

 ただ、むやみに吐き出せばいいというものではない。

まず、現実のトラブルを避けるために、周囲に知られないようにする必要がある。口の堅い友人、カウンセラー、自分しか見ない日記…。対象をきちんと選んで吐き出そう。SNSでの書き込みは、匿名的なつもりでも案外簡単に知られてしまうことが多い。

 また、吐き出すタイミングも重要だ。感情の3段階にあるときは、その思いにアクセスすると、感情がマックスで発動し、ネガティブな方向に思考が拡大し、行動に移してしまうこともあるし、我慢できたとしても、そこで考えたことは恨みとして記憶に加算されていく。

過去のつらい思い出を、吐き出しても、吐き出しても恨みが消えない、むしろ募っていくのは、3段階に上ったままの状態で、吐き出しを続けているからだ。

 そんな時は、「下げる」、「そらす」のスキルで、間を置こう。

 吐き出すのに適切なタイミングは、感情の2段階になった時。2段階になると、感情の大波が収まるので、その思いを忘れようとしてしまいがちだ。それでは、また思いが固定してしまうだけ。少し体が緩んだ今、まだまだビビッドな感情を「吐き出す」ことで、我慢のエネルギーが解放され、心がすこし軽くなる。心が軽くなれば、視点やイメージの操作がしやすくなる。そうして嫌な記憶が少しずつ風化していく。