私は、あることを習得するプロセスについて、守破離と言われる段階で説明することが多い。
守は、誰かの教えを素直に受け入れ、そこに習熟すること。一般的には、パターン(型)から入るのが多い。これを覚えることである程度のパフォーマンスを上げることができる。
ただ、現実には様々なバリエーションがある。自分の能力適正、自分の置かれている環境、自分が取り組もうとしている問題などに合わせて、守で学んだ内容を応用していく段階が「破」。ようやく自分らしく行動できるようになりました…という感想が聞かれる。
離は、さらにその分野を探求し、その本質をつかんだ段階。その人が師として活動しているなら、自分が学んだ守とは違う教え方をするかもしれない。守の知恵から見ると完全に離れている知識体系に見えるが、光のあて具合が違うだけで、本質にはあまり差がないことが多い。
さて、問題はどの時点で次のプロセス(ここでは守から破)に進むかだ。
守を100%完全なものにしてから、破に移ろうと考える人も多いだろう。堅実な人だ。しかし、実は成長が遅い。というのも、80%ぐらいまでは順調に成長しても、あとの20%を完全にするには、これまでと同じぐらい、あるいはそれ以上の時間がかかるからだ。あまりにも長い期間、守にいると、守だけがすべてだと誤解し始める。これを「守の守りすぎ」と呼んでいる。
だから、80%できるようになったら、自分にはまだ早いと思わず、勇気を出して破に進んだ方がいいのだ。破に進むとこれまでとは違った視点で見られるようになる。破の進みは遅々としていても、いつの間にか守の技術が100%に近づいていることが多い。
一方、守を早く捨ててしまう人も少なくない。20%ぐらいかじった程度で「わかった気」になり、自分なりのアレンジを始めてしまう人。結局、守の土台ができておらず、その趣旨も理解していないので、破も迫力のない軽薄なスキルにとどまってしまう。それでも、いわゆる「博識」にはなれるかもしれないが、そんな表面的な知識やスキルは、AI時代には全く役に立たなくなるだろう。
カウンセリングも感ケアも、まずは守を80%のところまで高めたい。